ニンフ 1


 俺はつくづく自分を夢のない人間だと思っている。人生はすべて計算によって成り立つべきもので、直情径行的に動くものではない――そんな現実的なことをよく考えていたものだ。
 夢はあるか? と聞かれたら、正直にないと答えるだろう。そんな非現実的なことを考えている暇があるならば、内申を稼ぐために勉強でもしたらどうだ、とこれまた悲しいほど現実的なことを言ったりする。
 そんな俺にだって、小さい頃は夢があった。野球中継でここぞという時に選手がホームランを打つと、「すげえ! 俺も○○選手みたいになる!」なんてことをその場の成り行きで言ったりしたものだ。しかし、俺はどうも飽きっぽい性格らしく、そんな願望も長続きはしなかったが。
 そんなこんなで年を経る度に、俺は現実的に物事を考えるようになった。人と付き合う際は温和になることに徹し、気配りにも精を出し、気付けば俺はみんなのまとめ役に抜擢されるようになった。
читать дальше

лексика, грамматика